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東京地方裁判所 昭和49年(ワ)8316号 判決 1975年10月30日

原告 丸三商事株式会社

被告 更生会社丸一産業株式会社 管財人 山地弘高

主文

被告は原告に対し、別紙物件目録記載の木工機械を引渡せ。

訴訟費用は、被告の負担とする。

この判決は、原告において金一、〇〇〇、〇〇〇円の担保を供するときは、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

(原告)

主文第一、二項と同旨の判決ならびに仮執行宣言、

(被告)

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

第二当事者の主張事実

(請求原因)

一  原告は、昭和四八年一二月二六日訴外丸一産業株式会社(以下、丸一産業と略す。)に対し、原告が所有する別紙物件目録記載の木工機械(以下、本件機械という。)を次の約定で売渡す旨の契約(以下、本件契約という。)を締結した。

1 代金九、五〇〇、〇〇〇円

2 代金支払方法

(一) 契約締結時 金三、〇〇〇、〇〇〇円

(二) 昭和四九年七月一二日金二、〇〇〇、〇〇〇円

(三) 同年八月一二日金一、五〇〇、〇〇〇円

(四) 同年九月一二日金一、五〇〇、〇〇〇円

(五) 同年一〇月一二日金一、五〇〇、〇〇〇円

3 特約

(一) 右代金完済に至るまで、本件機械の所有権は原告に留保する。

(二) 丸一産業が支払を停止し、または第三者より差押、仮差押、仮処分、破産の申立、刑事上の訴追等を受けた場合は、原告は催告を要することなく、本件契約を解除することができる。

4 本件契約に関する訴訟は、原告住所地の管轄裁判所の管轄とする。

二  原告は丸一産業に対し、その頃本件機械を引渡したが、丸一産業は、前記代金中金三、〇〇〇、〇〇〇円を支払つたのみで、残金六、〇〇〇、〇〇〇円を支払わないまま、昭和四九年六月一六日債務超過のため支払不能に陥つたので、原告は、前記特約にもとづき、同年六月二一日到達の書面をもつて丸一産業に対し、本件契約を解除する旨意思表示した。

三  仮に右主張が認められないとしても原告と丸一産業は、昭和四九年七月二日本件契約を合意解除し、丸一産業は原告に対し、本件機械を返還することを約した。

四  丸一産業については、その後会社更生手続開始決定がなされ、昭和四九年三月三〇日被告がその管財人に選任された。

五  よつて原告は、被告に対し、第一次的に本件機械の所有権に基づき、第二次的に本件契約の合意解除による本件機械の返還約束により、本件機械の引渡を求める。

(認否等)

一  原告主張の請求原因事実中、原告が丸一産業に対し、本件契約を解除する旨の意思表示をしたこと及び原告と丸一産業が本件契約を合意解除したことはいずれも不知、その余の事実は認める。

二  本件契約中に存する所有権留保の特約は、原告の丸一産業に対する代金債権確保のためのものであつて、その実質は、本件契約により丸一産業が所有権を取得した本件機械に対する担保権の設定と解すべきであるから、丸一産業につき会社更生手続が開始された以上原告は、更生担保権者としてその権利を行使すべきであり、本件機械につき取戻権を行使することはできない。

(抗弁)

釧路地方裁判所北見支部は、昭和四九年六月一四日丸一産業の一切の財産の処分を禁ずる旨の保全処分をしたが、原告主張の合意解除は、右保全処分の後、これに違反してされたものであるから、無効である。

(認否)

争う。

第三証拠<省略>

理由

一  原告と丸一産業との間に、本件契約が締結され、原告が丸一産業に対し本件機械を引渡したこと、右契約中には、代金完済に至るまで、本件機械の所有権は原告に留保されるものとし、丸一産業が支払不能に陥つたときは、原告は直ちに本件契約を解除しうる旨の特約が存したこと、丸一産業が本件機械の代金中金六、五〇〇、〇〇〇円を未払のまま昭和四九年六月一六日支払不能に陥つたこと及び丸一産業につき会社更生手続が開始され、被告が昭和四九年三月三〇日その管財人に選任されたことについては、いずれも当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第三号証の一、二によれば、原告は昭和四九年六月二一日到達の書留内容証明郵便をもつて丸一産業に対し、本件契約を解除する旨意思表示したことが認められ、右認定に反する証拠はない。

二  被告は、売買代金債権確保のため所有権を売主に留保してある物件が売買された場合、その実質は、売主の代金債権確保のための担保権の設定とみるべきであるから、会社更生手続が開始された後売主は、更生担保権者としてその権利を行使しうるに止る旨主張するが、特約により右物件の所有権を留保した売主は、会社更生手続が開始された後においても、右物件の所有権を主張してその取戻を求めるか、又はその所有権を主張することをせず、所有権留保約款付売買により、その売買の目的物件につき仮登記担保権と同様の担保権を有することを主張して、更生担保権者としての権利行使をするかの選択権を有すると解するのが相当であるから、被告の右主張は理由がない。

三  よつて原告の本訴請求は、その余の点につき判断するまでもなく理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、仮執行の宣言につき同法第一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 野崎幸雄)

(別紙)物件目録

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型式 UNIMAT 一七N N〇八 一台

軸の配列 第一軸 ムラ取下軸モーター 七・五馬力

第二軸 ムラ取下軸モーター 七・五馬力

第三軸 左垂直軸 七・五馬力

第四軸 右垂直軸 七・五馬力

第五軸 水平上軸 一〇馬力

第六軸 水平下軸 一〇馬力

第七軸 水平上下垂直右より九〇度傾斜可能 七・五馬力

送り 五・五馬力

カツターブロツク 外径一二五φ×一三〇巾×三五穴径 四ケ

外径一二五φ×一五〇巾×三五穴径 二ケ

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